・ダイドーリミテッドへの株主提案について
・日産車体の少数株主を守るために
・京阪神ビルの抜本的経営改革のために
ダイドーリミテッドへの株主提案の背景について
株式会社ストラテジックキャピタル及び同社が運営するファンド(以下、総称して「SC」といいます。)はダイドーリミテッド(以下、「ダイドー」といいます。)の議決権の約32%を保有しています。
ダイドーは赤字が続いているほか、様々な問題を抱え経営不振に陥っています。そのような問題の解決に向け、 SCは本年6月の定時株主総会に向け、現任取締役6名に代え、新たに6名の取締役を選任することを提案しました。

長期の赤字継続と株価の下落
ダイドーの営業損益は、過去10年間全ての年度で赤字です。特別利益の計上により、23/3期、24/3期の最終損益は黒字となりましたが、不動産売却等による一過性のものであり、本業の業績は悪化し続けています。
結果として、ダイドーの株価は2006年以降、右肩下がりに下落し、2022年には10分の1以下の株価となりました。

出典:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成
ダイドーの時価総額は170億円程度ですが、複数の賃貸等不動産を保有しており、その含み益は約230億円となります(含み益の大半は小田原のショッピングセンター「ダイナシティ」)。
そのため、賃貸等不動産の含み益を考慮した場合の修正PBRは僅か0.5倍程度と、解散価値を大きく下回っています。

出典:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。純資産額は2024/3期、賃貸等不動産税後含み益は、「(2023/3期 賃貸等不動産時価 – 簿価)×0.85(繰越欠損金を加味し、税率は15%)」で算出
ダイドーの本業である衣料事業は、過去10年間のうち、19/3期を除き全て営業損益が赤字です。
また、セグメント損益に配賦されないリストラ費用・減損損失・本社費用等の大半は、実質的に全社売上高の約9割を占める衣料事業から発生したものであり、これらを考慮すると過去10年間累計で200億円超の損失が発生しています。

出典:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。リストラ費用等は事業構造改善費用及び特別退職金を合算。本社費用は各セグメントに配賦されない費用をセグメント売上高で案分して算出
同業他社がコロナ禍で落ち込んだ業績を回復させているなか、ダイドーの衣料事業は24/3期も営業赤字が継続しており、経営状況には全く改善が見られません。
また、ダイドーは2016年にPONTETORTOに、2020年にブルックス・ブラザーズ・ジャパンに対して出資(M&A)を行っていますが、何れも5年以内に両社に関する減損損失を計上しています。

出典:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。ダイドーリミテッドは衣料事業、オンワードはアパレル関連事業、TSIはアパレル関連事業、その他の企業は全社の連結損益から算定
従業員のリストラと経営陣による1円ストックオプションの利益享受
ダイドーは、複数回にわたり従業員の希望退職を実行し、単体の従業員数は14/3期末の73名から23/3期末には35名まで減少し、平均年間給与は同期間で651万円から554万円へと減少しました。
一方、ダイドーの経営陣及び監査役は、2006年以降、ダイドー株式を1円で取得でき、株価が下落するほど得られる株式数が増加する仕組みのストックオプションが付与され続けました。SCの度重なる改善要請を無視して昨年も継続しています。このように、ダイドーは業績低迷に伴う負担を従業員に強いる一方で、経営陣と監査役だけにメリットがある制度を継続しています。

出典:ダイドー開示資料、QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成
資本コスト未満の収益しか得られない不動産賃貸業の継続
SCからの度重なる要請を無視し、ダイドーは、資本コストを大きく下回る資本収益性しか得られない賃貸等不動産の保有を漫然と継続するだけではなく、旧本社ビルをセール・アンド・リースバック取引の手法により処分した手取金によりビジネスホテル(取得価格約30億円)及びオフィスビル(同約60億円)を新たに取得しました。

一般的に、セール・アンド・リースバック取引は、資本効率の改善を目的として行われることが多いものの、ダイドーにおいては取引で得た手取金により代替不動産を取得しており、旧本社ビルの売却は資本効率の改善に寄与していません。旧本社ビル売却の目的は、赤字が続くことへの株主からの批判を免れるために会計上の最終損益を黒字化させることにあったと考えざるを得ません。

出典:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。不動産売却益を除いた税引前損益は、税引前損益から建物及び土地の売却益を減じて算定
SCが提案する取締役候補者
SCは、ダイドーへの投資を開始して以降、ダイドーに対して様々な提案を行ってまいりました。しかしながら、その提案は殆ど取り入れていただけず、現体制では株主価値の向上は実現不可能であると判断いたしました。
SCは、今回提案する取締役候補者は株主価値向上に資すると確信しています。
具体的には、アパレル、不動産会社をはじめとする事業会社の経営に携わっていた候補者や、事業再建の経験が豊富であり、ダイドーの再建に相応しい候補者を選定できたと自負しております。また、女性候補者も含まれ、ダイバーシティ推進にも寄与するものと考えています。

②株主提案を受けたダイドーの対応について
SCの株主提案を受けダイドーは、2024年5月20日に中期経営計画を公表したほか、2024年5月24日に現任取締役6名のうち、白子田圭一氏を除く5名が取締役を退任し、代わりに新たに5名の新任取締役(うち、4名は外部から招集)を選任することを6月の株主総会に提案する旨、発表しました。
SCは2024年5月21日にダイドーより上記方針の通知を受け、翌日22日にダイドーが代表取締役候補として提案する山田政弘氏と面談しています。ダイドーおよび山田氏からの説明を受け、SCは今般のダイドーの提案内容はダイドーの株主価値を著しく棄損する懸念があると判断しました。そのため、ダイドーの提案内容等を承認または黙認していると考えられるダイドーの提案する取締役候補6名全員に反対し、当初よりSCが提案している取締役候補6名の選任に賛成いたします。

ダイドーの提案に反対する理由①:代表取締役候補者が多数の兼職を有し、継続する意向を表明している
常勤の代表取締役候補として提案されたジェミニストラテジーグループ(以下、「ジェミニ」といいます。)から派遣される候補者(特に山田氏)は、フルタイムを含む多数の兼職があり、ダイドーの経営にコミットしているとは到底考えられません。
山田氏は、仮にダイドーの取締役に選任された場合も、これらの兼職を全て継続することを表明しています。上場企業の代表取締役CEOで子会社・関連会社以外の代表取締役等をこれほど兼任することは極めて異例です。
対して、SCが提案する常勤取締役候補の中山俊彦氏は、現在個人で経営・投資コンサルティング業務を行っていますが、ダイドーの取締役に選任された場合は、ダイドーの業務に専念するため、当該業務は取締役選任の日をもって直ちに終了することを表明しています。

出典:ダイドー公表資料及びジェミニストラテジーグループウェブサイト
ダイドーの提案に反対する理由②:山田氏・成瀬氏とダイドー株主との重大な利益相反懸念がある
山田氏及び成瀬氏が所属するジェミニは、現在ダイドーに対し経営コンサルティング等のサービスを提供しており、ダイドーから手数料を受け取っています。また、今後はそれに加え、M&Aのアドバイザー等も務める方針です。
そのため、ジェミニ側は山田氏及び成瀬氏の取締役報酬に加え、別途コンサルティングフィーをダイドーから受け取り続けることになります。
山田氏はジェミニの創業者・代表取締役社長、成瀬氏はジェミニの幹部社員であり、関連当事者間取引が継続・拡大することで、ジェミニ側とダイドー株主との間に重大な利益相反が生じる懸念があります。このような状況も上場企業としては極めて異例かつ不適切です。

出典:ダイドー中期経営計画
ダイドーの提案に反対する理由③:現経営陣は顧問として会社に関与し続ける
現在のダイドーの代表取締役社長である鍋割宰氏及び取締役上席執行役員の渡部克男氏は、取締役を退任後は顧問としてダイドーに残る方針である旨、SCに表明しました。しかしながらSCは、現経営陣は経営不振を招いた責任を取り、取締役退任後はダイドーに関与すべきではないと考えます。
ダイドーの現経営陣は、SCから株主提案を受けたことで取締役に再任されることが難しいと判断し、顧問といった形で会社に関与し続けるために、形式的に外部人材を代表取締役に立てた疑いがあります。
ダイドーの提案に反対する理由④:ジェミニの選定プロセス、トラックレコードに懸念がある
ジェミニとダイドーは現代表取締役社長の鍋割氏の知人経由で知り合ったとのことですが、約1年前にジェミニがコンサルティングを開始した際も、今回の協業拡大の際も、他のコンサルティング会社とのコンペ等は行われていません。
また、ダイドーは中期経営計画において、ジェミニの実績としてダイドーと同様にアパレル事業を営むバロックジャパンリミテッドを挙げています。バロックジャパンリミテッドは、主力ブランドでダイドーと同じジェミニのサービスを導入することを2021/2に公表していますが、その後、バロックジャパンリミテッドの業績がどのように改善したかについて、ダイドーは「把握していない」とコメントしています(なお、バロックジャパンリミテッドの連結営業利益は右肩下がりで全く改善しておらず、導入発表後の株価パフォーマンスは同業他社、TOPIXに大きく劣後しています)。
ダイドーは、代表取締役の派遣から、経営コンサルティングまで全面的にジェミニに依存する方針ですが、このような選定プロセス、トラックレコードを鑑みるとジェミニにダイドーの再建を託すことは出来ません。
ダイドーの提案に反対する理由⑤:実現性の乏しい中期経営計画
ダイドーが発表した中期経営計画はジェミニが作成に携わっています(今回、この中期経営計画策定に関する手数料もダイドーから支払われました)。しかしながら、当該中期経営計画は具体性・実現性に乏しく、数値の検証も行われておらず、これを監修した山田氏がダイドーの株主価値向上に資するとは到底思えません。現に、中期経営計画の公表以降、株価は全く上昇していません。
①営業利益15億円の目標は数値の検証がなされておらず、実現性に疑問がある既存事業における27/3期の営業利益目標908百万円は、以下のダイドーの中期経営計画の表から計算すると836百万円(売上総利益17,009百万円-販管費16,173百万円)となるため、内訳若しくは908百万円の数値自体に大きな誤りがあります。
また、販管費は「人件費上昇などを踏まえ年率1.7%の増加を計画」としておきながら、27/3期に約▲4億円と大幅に削減されることになっていますが(上記の誤りを修正すると約▲5億円)、その理由についての説明はありません(面談、決算説明会においてSCがこの点をダイドーに質問したところ、「即答できない」と回答されています)。

出典:ダイドー中期経営計画
営業利益を改善させる新たな施策のうち、改善効果の約半分の金額(592百万円)を新規事業・M&Aに頼っています。特に、M&Aのターゲットは「アパレル関係全般」とされ、「具体的な対象事業・地域等は幅広く検討する」と説明を受けており、全く具体性がありません。

出典:ダイドー中期経営計画
②ROE8%の目標は、願望に過ぎないダイドーは中期経営計画の最終年度である27/3期にROE8%を目標に掲げています。
しかしながら、BSのシミュレーション等は作成しておらず、SCはダイドーから8%とした根拠を「株主資本コスト7%を上回る目標とするため」と説明を受けています。つまり、何の根拠もない願望であるといえます。なお、8%ではダイドーの株主資本コストを上回っているとも思えません(2024/5/24時点でダイドーの株主資本コストをBloombergは9.6%、Quickは9.7% としています)。
そもそも、ダイドーは時価総額約170億円に対し、約230億円の賃貸等不動産の含み益があり、簿価ベースのROEは意味を成さず、仮に達成したとしても株価上昇は見込めません。

出典:ダイドー中期経営計画
③保有不動産の売却のうち、ダイナシティのみを対象外とすることに合理性がないダイドーは新規事業、M&Aの資金を確保するため、中期経営計画の期間で、昨年取得したばかりのビジネスホテル(23/4取得)及びオフィスビル(23/12取得)の売却を検討する一方、含み益が約230億円ある小田原のショッピングセンター「ダイナシティ」については「中期経営計画の期間は売却対象としない。将来的には検討を行う」としています。
ダイドーは「ダイナシティは、収益率が高いため他の不動産とは別で考えている」とのことですが、簿価約30億円、時価約260億円のダイナシティを簿価で収益管理していると説明を受けており、高収益となるのは当たり前のことです。
また、ダイドーは約200億円の繰越欠損金があり、そのうち約64億円が中期経営計画最終年度である27/3期までに失効します。もしダイナシティを売却するのであれば、この繰越欠損金を活用することで多額の税メリットを享受できますが、この観点からの検討は全くなされていません。

出典:ダイドー中期経営計画

出典:ダイドー23/3期有価証券報告書に記載の繰越欠損金額(法定実効税率を乗じた金額)から、税率30%を割り戻し試算
③議決権行使について
株主の皆様におかれましては、ダイドーの再建、株主価値向上に向け、会社提案の取締役候補に反対、株主提案の取締役候補に賛成をお願い申し上げます。

日産車体の少数株主を守るために
弊社及び弊社の運営するファンド(“SC”又は“弊社”)は日産車体株式会社(“日産車体“または”当社“)の株主です。
日産車体の議決権の50%は日産自動車株式会社(“日産”)が保有しており、両社はいわゆる親子上場の状態にあります。
SCは日産車体に対し、株主価値向上のため、株主提案権を行使して次の議案を提出しました。
株主提案【少数株主保護委員会の設置】
SCは日産以外の日産車体の株主、すなわち少数株主の利益を守るため、少数株主保護委員会の設置を求めます。
少数株主保護委員会は、少数株主の意見をヒアリングし、ヒアリングに基づく適切な勧告を取締役会に対して行うことを目的とした委員会であり、日産車体における少数株主の利益を保護することが期待できます。
少数株主の支持を得られない取締役会
日産車体の取締役会は、少数株主の支持を得られていません。
2023年の株主総会では、吉村社長を含む取締役6名の選任が決議されましたが、いずれの取締役も少数株主の65%超が反対し、吉村社長に至っては少数株主の83%が反対していました。

(出所:臨時報告書より弊社作成。棄権は捨象)
明確になった少数株主の意思
2022年の株主総会において、①日産からの天下り禁止、②日産への資金提供の禁止、それぞれを求めた株主提案に対して、少数株主の60%以上が賛成票を投じました。
親会社である日産との関係性の中でも、個別具体的な事項について少数株主は明確に反対の意思を表明したのです。

(出所:臨時報告書より弊社作成)
少数株主を“無視”した日産車体の経営
少数株主を無視した役員人事
日産車体が少数株主を無視していることは、役員人事から明らかです。
- ❶2023年の株主総会では、現任取締役の選任議案に対する少数株主からの賛成率は最高でも33%、吉村社長に至っては17%にとどまります。さらに、品田英明氏以外の取締役は少数株主の賛成率が50%未満であっても、継続して取締役に選任されています
- ❷2022年の株主総会で日産出身者の取締役選任禁止の株主提案が少数株主の60%以上の賛成を集めたにもかかわらず、2023年の株主総会では日産出身の取締役候補者を減らしてさえいません
- ❸日産車体は指名委員会が中立的な立場から、役員人事の監督を行っています。しかし指名委員会の委員を務める社外取締役さえ、少数株主からの賛成率は30%程度にとどまります

(出所:臨時報告書より弊社作成)
日産車体は、2020年1月、「指名及び報酬の意思決定に関する手続きの透明性と客観性を高めることを目的」として指名・報酬委員会を設置しました。
しかし、指名・報酬委員会は、少数株主を無視する日産車体の指名方針を今日に至るまで是正せず、追認しているだけです。
従ってSCは、日産車体の指名・報酬委員会は、少数株主の意思を全く反映せずに取締役候補を選出し、少数株主の利益保護に何ら寄与していないと判断しています。
少数株主を無視した日産との取引
日産車体は、2023年12月末現在、預け金として395億円、貸付金として700億円、合計で1,095億円の資金を日産に提供しています。
2022年6月の株主総会では、少数株主の72%が日産への資金提供禁止を求めた株主提案に賛成しました。しかし、日産車体は少数株主の72%の意見を完全に無視し、日産への資金提供を継続しています。

(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成)
2020年1月、日産車体は、親会社である日産との取引によって「日産車体及び株主共同の利益を害することがないよう」に、取引モニタリング委員会を設置しています。
しかし、少数株主の72%が反対している資金提供取引は現在に至るまで継続しています。少数株主の72%が反対する取引について、是正勧告を行わない取引モニタリング委員会が少数株主の利益保護に貢献しているとは考えられません。
従ってSCは、日産車体の取引モニタリング委員会は、少数株主意思を無視して日産への預け金を承認し続け、少数株主の利益保護に何ら寄与していないと判断しています。
毀損される日産車体の株主価値
収益性の低い日産との取引
日産車体は売上高のほぼ100%を日産に依存しています。そのため、日産車体の営業利益率が2%前後に留まる理由も、ROEが上場企業に求められる最低水準、すなわち8%に遠く及ばない理由も、日産との取引が原因です。
日産車体に限らず、上場企業であれば2〜4%程度のROEしか期待できない取引を継続することは、株主価値を毀損する行為に他なりません。

(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)及び有価証券報告書より弊社作成)
日産車体に対する資本市場の評価
当然、このような低水準のROEを反映し、日産車体の株価は解散価値であるPBR1倍を下回って長期にわたり低迷しています。
日産車体の時価総額は1,440億円であり、これは日産に対する債権1,398億円とほぼ同額です。つまり、日産との不利な取引を終了して1,398億円を回収し、本社などの資産も売却して会社を解散した方が株主価値向上に資する状態です。

(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成、2024年3月29日現在。
日産に対する債権=預け金+貸付金+売掛金−買掛金。売掛金及び買掛金は全額を日産に対する債権債務とみなして算定。)
SCを含む日産車体の少数株主は、日産車体の解散まで望むことはないかもしれません。しかし、親会社である日産から事業の利益を収奪され、少数株主の利益だけが一方的に侵害されている現状は是正されるべきです。
上場企業に求められる少数株主の保護
そもそも日産車体は、親会社である日産1社に売上高のほぼ100%を依存しており、事業活動に独立性が無く、現在の上場ルールでは新規上場を行うことは不可能です。そのうえで、さらに少数株主を無視した経営を継続しているのです。
SCは、日産車体が少数株主の権利や利益の保護といった上場企業の責務を果たしていない状態で上場を維持すべきではないと考えます。

少数株主保護委員会
SCは、少数株主の利益保護を目的とした、社外取締役によって構成される少数株主保護委員会の設置を提案しました。
日産車体の役員人事や、日産への預け金/貸付金の状況を見れば、日産車体の指名・報酬委員会や取引モニタリング委員会が少数株主の利益保護という本来の役割を果たせていないことは明らかです。
少数株主保護委員会を通じて、少数株主の意見を経営に反映させることが、日産車体のガバナンスを改善させ、株主価値向上に資すると確信しています。

京阪神ビルの抜本的経営改革のために
弊社及び弊社の運営するファンド(“SC”又は”弊社”)は京阪神ビルディング株式会社(“京阪神ビル“または”当社“)の株主です。
SCは京阪神ビルに対し、株主価値向上のため、株主提案権を行使して次の議案を提出しました。
株主提案①:解散価値割れの株価を是正する2カ年計画の策定
SCは解散価値割れの株価を是正することができる2カ年計画の策定を求めます。
すなわち、賃貸不動産という資産価値に裏付けられた京阪神ビル本来の価値に対して株価がディスカウントされた状態を直ちに是正すること、そして10年といった不確実性が高く現経営陣が責任を持てない期間ではなく、2カ年という予見可能性の高い期間で是正することを求めます。
毀損される株主価値
京阪神ビルの株価は、本来の株主価値から38%のディスカウント評価を受けています。これは、京阪神ビルには本来1,304億円の価値があるものの、現在の経営方針では800億円の価値にディスカウントする必要がある、という市場からの端的な評価です。
修正自己資本を基準にした修正PBRは0.62倍となり、京阪神ビルの株価は解散価値割れの状態となっています。

(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。財務情報は2023年3月期末、時価総額は2024年3月29日現在)
常態化したディスカウント評価
京阪神ビルの株価はディスカウント評価を受けることが常態化しています。経営者が変わり、経営計画が更新されても、京阪神ビルに対するディスカウント評価は是正されていません。
京阪神ビルの経営陣は、多くの企業が志向する「中長期的な企業価値の向上」を達成できていないのです。

(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)及び会社開示資料より弊社作成。株価は2024年3月29日現在)
TOBへの反対と京阪神ビルの現状
京阪神ビルの経営陣は、2020年11月、SCが行った1,900円でのTOBに対して反対を表明しました。そして、このTOBは不成立に終わっています。
TOBの終了後、取締役会は京阪神ビルの株価をTOB価格以上に向上させることも、不動産業の平均的な株価パフォーマンスを実現することもできていません。

(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。株価は2024年3月29日現在)
(注:※不動産業は、TOBの公表日から京阪神ビルの株価がTOPIX業種別指数(不動産業)と同様のパフォーマンスをしたと仮定した場合の京阪神ビルの想定株価)
無責任な経営計画
7カ年の経営計画を根拠としてTOBに反対
京阪神ビルの取締役会がTOBに反対した理由の一つに、京阪神ビルの経営計画とSC提案の乖離があります。たしかに、TOB当時の経営計画によってTOB価格以上の株価を実現できるならば、反対することに一定の合理性はあります。

(出所:2020年11月19日付当社開示資料)
大幅未達に終わった5カ年・7カ年計画
しかし、京阪神ビルが過去に掲げた経営計画と実績を比較すれば、京阪神ビルの経営計画は非現実的であると評価せざるを得ません。
京阪神ビルは、大幅未達となった5カ年計画を2年で撤回し、同様に7カ年計画も4年で撤回しています。そして、2023年には10カ年の経営計画を公表しています。
5年計画、7年計画が大幅な未達に終わったにもかかわらず、10年というさらに長期の計画を掲げることは、株主価値の向上という課題を先送りしているだけであると、SCは考えます。

(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)及び当社開示資料より弊社作成)
低く、遅く、不確かな10カ年計画
2014年、経済産業省が発行した伊藤レポートにおいて、企業価値を生み出すためには、最低限8%を上回るROEの達成が必要である、と明示されました。

(出所:経済産業省(2014)「持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築〜」プロジェクト(伊藤レポート)最終報告書)
2023年には、東京証券取引所から、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」が開示され、再びROE8%未満の上場企業に対する問題提起がなされました。

(出所:東京証券取引所(2024)「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」より弊社抜粋。黄色ハイライトは弊社)
しかし、京阪神ビルが2023年に発表した経営計画において掲げたROE目標は、2028年で6%、2033年で8%となっています。
2014年に8%という最低限の水準が明示されたにもかかわらず、京阪神ビルは10年後に開示した経営計画で、さらに10年後の目標として8%という数字を掲げました。そして過去の経営計画の大幅未達の実績を踏まえると、その8%という遅く低い目標でさえ、達成できるか疑わしいのです。

(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)及び当社開示資料より弊社作成)
そこでSCは、京阪神ビルのディスカウント評価の速やかな是正及び株主価値向上を実現させるために、2年以内に修正PBR1倍以上を達成することができる経営計画の策定を提案しました。
株主提案②:修正PBRと連動した変動報酬の導入
2つ目の提案として、SCは修正PBRと連動した株価変動報酬の導入を求めます。
修正PBR1倍に到達するまではゼロ円、修正PBRが1倍を超えれば最大で年間3億円の報酬を付与する報酬制度の導入を提案します。
そして、執行役員等の幹部社員にも同様の報酬制度を導入し、常態化したディスカウント評価をプレミアム評価に変える全社一体となった意識改革を行うべきです。

保守的過ぎる経営計画を招く報酬制度
若林社長による自社株式の保有状況
若林社長は時価でおよそ2,289万円の京阪神ビル株式を保有していますが、これは取締役の平均基本報酬3,343万円(278万円/月)にも満たない金額です。
京阪神ビルの株主価値向上にコミットすべき経営トップが、基本報酬程度の株式も保有していない状況は、一般株主としては物足りないものでしょう。

(出所:2023/3期有価証券報告書)
経営成績と連動しない報酬制度
5カ年計画、7カ年計画と連続で経営計画が未達であったにもかかわらず、役員賞与や業績連動報酬の金額に影響を与えていませんでした。
このような状況で、10カ年計画へのコミットメントを経営陣が表明しても、市場からの信頼を得ることは難しいでしょう。

(出所:有価証券報告書より弊社作成。金額は社外取締役でない取締役の一人あたり平均金額)
そこでSCは、京阪神ビルの役職員に株主価値向上への適切なインセンティブを与えるため、修正PBRと連動した報酬制度を提案しました。